白川郷への情熱、執念と去年の昂りを胸に目指したバイクの旅
「岐阜県高山の山奥、白川郷の集落を下道で目指そう。」
そう考えたのは、去年の酷暑の続いた夏のある日。そう、あの記録的な大雨があった直後の話だった。
どうしてそう考えたのか、大きな湖のあるところに住んでいる私の身としては、ある意味、白川村は一つの到達点だと考えている。
片道で200km。そして、その間には山道、林道、渓流道、市街地道と私がこれまでバイクで辿った道の海道以外の全てが詰まっている。
そう思って去年の夏に敢行したはいいのだが・・・まさかの失敗。
通れぬ道を背中から徐々に遠ざけ、高山の纏わりつくような冷気に身体を震えさせ、降りしきるゲリラ豪雨の中でただひたすら無心で帰路についたのを今でも克明に覚えている。
去年にやり残したこと。それが白川郷へのバイクの旅。
2019年は白川郷への到達を必ず行う。そのことを胸に秘めて迎えた今年、5月。
元号が令和へと変わって間もない2日のことだった。
というわけでいきなり、滋賀岐阜間の国道303号線までワープ。
今年こそ白川郷を目指すぜ!
場所は谷汲山へ行くための国道303号線と岐阜県道40号線の分岐点。
例によって、進行方向と逆側に撮ってはいるが、進行方向には結構大きなトンネルがある。
国道303号のトンネルを揖斐川側へいくつか抜けた先の信号機付きの交差点にあるので非常にわかりやすい。
トンネル抜けてを岐阜県道40号線に入り、暫く走る。
山に沿うような、うねった道はすごく好き。走っていて楽しいし、初夏だとすごく気持ちが良い。
まずはこの道を真っ直ぐ走り、中継地点の岐阜県の山県市を目指す。
普通なら大道に沿って関市だとか美濃市を経由するのだろうが、県道40号線と一部国道157号線から生活路を経て、岐阜県道79号線に合流することで、関市と美濃市をスルーして、山県市→郡上市へと比較的スムーズに向かうことができる。
県道40号線の農道を通り抜けた先の分岐点。
ここから国道157号線少し北へ走って、あるローカル駅を左手に映す。
それがこの木知原(こちぼら)駅。
「こちばら」ではなく「こちぼら」。つくづく地名とは不思議な読み方をするものである。
この、木知原駅の前に、東に抜けるように生活道がある。
思いっ切り通学路って書いてある・・・。
世間一般では長期休暇中だし・・・大丈夫、だよね・・・?
人の影はあまりなかったが、念の為に近隣の住民さんの挙動を確認しつつ、安全第一でバイクを進める。
排気ガスで環境には優しくないが、せめてその場所、その町に住む人達には優しく。それが俺のライダーとしてのポリシーだ。
しかしながら、やはり生活道だけあってか、その道幅は狭い。
ぶっちゃけ言うと車でのスムーズな通り抜けは無理。
近隣の人らしき車と途中何度かすれ違ったが、車とバイクのすれ違いで結構ギリギリ。
もし、車で通り抜けるなら、対向車が来たら分岐点までバックで戻る覚悟で入りましょう。
土地勘のない一見の車が、近隣住民さんたちの車を押しのけてまで通る道ではありません。
こういった感じで一応、退避スペースはあるんだけど・・・。(進行方向と逆側写し)
ちょっと待った。風景が一気に変わってるって?
いや、だってマジでこんな道なんだもん。生活道というか、むしろ生活林道?
林道は大好物だ。前もこっちの記事で言っていたようにタイヤのダメージが気になるけど。
そうしてこのまま道を真っ直ぐ進んでいくと、岐阜県道79号線へ合流できる。
左手に写っている細い道が、先程までの生活林道。
これまた進行方向と逆に写しており、奥に写った県道79号線の続く先は未走。
そのまま、県道79号線を抜けて山県市へと向かう。
ここで、要注意ポイントの交差点を抜けた後で映したもの。
写真では右側に写っているのが県道79号線だが、真っ直ぐ進むとダメ。
写真に左・・・つまり、真っ直ぐ進むと別の県道に入って本巣市→岐阜市・関市・美濃市辺りに抜けてしまう。
県道79号線を抜けるなら、一度曲がらなければならない。
県道79号線を抜けて、国道256号線の分岐点。
分岐点にちょうどコンビニがあったので少しコーヒー休憩。
この先、国道256号線を通り抜けた・・・結構先に郡上市がある。
・・・とは言うものの、この国道256号線は少し厄介で、地理感がないと面倒な分岐ポイントがいくつかある。
一つ間違うと別の方向へと駆け抜けてしまうので、国道256号線を案内標識に従いなめるように進んでいかなければならない。
そして・・・
その中でも厄介なのがここの伊良湖・洞戸への分岐。
写真は順路側を映しているがこの先、直進すれば住宅地、左折で伊良湖、右折で洞戸。
カーナビ風に言うところの斜め左とか非常に分かりづらい分岐となっている。
ここは惑わされず、必ず洞戸へ向かうように。
洞戸方面へ向かえば、後は郡上市までほぼ一本道だ。
山間の国道にありがちな道が続く。
ここまで来ると、車の数はそこまで多くはなく、かなりのんびりと走れる。
そして、この先は迷うことも無いため、景色を楽しみながら走るのも一興。
そうして、国道256号線をず~っと進んで、高賀渓谷へ入る。
時折、漂ってくるBBQの匂いが鼻をくすぐった。
そう言えば、この付近はかの著名なモネの池があることで有名。
が、今回の目的は、飽くまで白川郷なので、時間の兼ね合いもありスルーする。
高賀渓谷から郡上市への分岐地点。
渓流を挟んで対岸に移る橋があり、その端の最中に、綺麗な景色があったのでパシャリ。
水の音に対して安らぎを覚えるのは、もともと人間が海にいたからだろうか。
周囲の自然を感じて、普段から電子機器を嫌になるくらい触っている自分の心が洗われる気がする。
まぁこれは海じゃなくて渓流だけど。
で、橋の先にはトンネルがあり、そのトンネルを抜けて更にずっと進んだ先に国道256号線から国道156号線への分岐がある。
国道156号線自体が郡上市・関市間の道だが、この分岐を郡上市へ向かうと、実質的には高山と白川郷への道へと続いているいわば最終分岐である。
この最終分岐ははっきり言って迷うところもないので、写真には収めていない。
道路看板もわかりやすく、方向音痴の俺がわかったくらいなので、きっと分かるはず。
で、国道256号線→国道156号線へ入って、その件の国道156号線を高山側へ進んだ先。
白川郷までの中継地点。156号線を更に156号線に継ぐように曲がった先で進行方向と逆に映している。
この先、写真手前に行くほどこの国道がずっと続く。
ちなみに道中、改元最中に中継されていた郡上八幡もあったが、モネの池同様スルー。
というかここまで来ると、もうただただ白川郷のことだけしか頭の中に浮かばなくなる。
道路案内を時折確認しつつ、そのままずっと走らせて白鳥へ入る。
結構大きな道の駅。GWだけあってか、家族連れが盛りだくさん。
遠目に微笑ましく感じながらも、俺の意識は全く別の方向へ向かっている。
どことなく、懐かしい煙の香に誘われた。
かおりの元はお前か!
俺の腹がぐるりと鳴った。
やっぱり、岐阜っつったらこれだよな!
ちょっとの前の朝ドラだとか永○芽郁さんがどうとか、五平餅うまい、五平餅うまいとか言ってるミーハーな連中にはわかるまい。
つーか、五平餅はガキの頃におやつで散々食ったせいで、飽きに飽きすぎて正直食指が全然伸びない。
彼ら・彼女らに五平餅が本当に食いたいのかと問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。
天然だろうが養殖だろうが、岐阜の鮎は至高。
俺の地元的にも県民のアイデンティティ的にも琵琶湖の鮎を押したいところだが、はっきり言って琵琶湖の鮎よりも岐阜の鮎のほうが味は良いと思ってんだよね。(当然、旅補正もあるんだろうけど・・・)
白鳥の鮎で心と身体を満たしつつ、高山・白川のゲートへ。
ゲートと言いつつ、全然ゲートではないのだが、ここで昨年は足止めを食らったところなので、俺が勝手に実質的なゲートと思っているところ。
っしゃぁ!!今年は通れるぞおおおおおおお!!!
昨年の、あの通行止めの看板が俺の脳裏をかすめた。
ついに、俺はついにこの先へと進めるんだ・・・。
見よ、この雄大な自然を。
この高山山系の先に、俺が目指す白川郷【エルドラド】が待っているんだ・・・。
そしてついに・・・
ついたわぁぁぁぁぁ!
まぁ、この地点はまだ白川村の入口で、厳密に言えば白川郷集落ではないのだが。
ちなみにこの白川村の入口付近にある「旧遠山家住宅」となっているところはこんな感じ。
古き良き日本家屋。
もともと田畑のための良質な肥やしを得るために、昔の人はその元となるものを大切に保管していたというのは耳にしたことがあるが、個人邸宅でここまでしているところは見たことがない。
そういえば、俺がガキの頃に隣の家が、ここよりもかなり小規模ではあったがそういったものを溜め込んでいたので、その家の前を通るたびに鼻をつまんで歩いていたのを覚えている。
だが、大人となった今になって思うが、それもまさしく先人の知恵として実に合理的なもので、限りのあるソースを実に有効的に活用していたのだろうと思う。
先人の知恵と言うものはいつの時代も、後世のための財産。
まぁ今はもう建て替えられてしまってるけどね。
引き続き、高山山系をバイクを走らせて、その先。
俺は夢にまで見た白川郷の集落へと入った。
観光案内所でパンフレットを貰って、集落本体へと続く「であい橋」へ。
流石にGWだけあって凄い賑わいである。
俺もこの人の行列に合わせて橋を渡るが、人が歩くたびにギシギシと揺れる。
意味のわからぬ主に中国語や韓国語や、時折の西欧系の言葉がざわつく中、埋もれるように日本語で「こわい~」などの声が聞こえる。
まぁ過去酷道を命の危機を感じながら走ってきた俺には、この程度は屁でもないが・・・。
あー・・・でも高い所怖い・・・。
あ、ちなみに観光案内所やお土産屋さんも合掌造り。
というか、もともと合掌造りの民家を居抜いて改築したといったほうが正しいのだろうか。
それでも古き良き日本の古民家とその風景に、見入る。
時間が到着時点で結構押していたので、残念ながら中には入りたくとも入れなかったが、その雰囲気を十二分に感じる。
観光客の多さには少しだけ辟易したところもあったが、やはり、古来の伝統を残した家屋はどことなく懐かしさを感じさせる。
まぁ単なる茅葺の家なら、一軒だけ俺のところの近辺にもあるんだけどね。
「明善寺」というお寺さん。
真宗大谷派はうちの地域の在家で馴染みがあるので、一応、せめて賽銭だけはと思って投げ入れてきちんと拝んだ。
中に入っていない都合上、本尊様がどこにあるのはわからなかったが・・・。
囲炉裏で有名な「和田家住宅」。
本当は中も少し見たかったが・・・とりあえず時間の都合上どうしようもない。
そして、俺の求める本命へ向かう。
そう。この坂を登ったところだ。
振り向いて。
俺の今回の旅の本懐を遂げるために、山の傾斜に足を進める。
もう少しだ。
あった。
この時点で時刻は15時過ぎ。16:00にCLOSE。セーフ!
そして、俺は今回の長い旅の本懐をここに遂げる。
そう、これこれ。白川郷への情熱と、執念と去年の昂りは全てこの景観にあったんだ。
このとき、この瞬間のために俺ははるばる片道200kmをバイクで走り抜いてきたのだ。
感無量でこの場でこの風景を、この目に映した。
むか~し、テレビ越しにこの風景を見た時に、絶対に自分の目の中と手の中に収めたいなってずっと思っていたんだよな。
それが2019年5月2日。これにて果たされた。
空は快晴。空の青さの下に広がるこの村の景色を、芽吹いた山の緑と、山峰の僅かな残雪の白がより引き立たてくれた。
この雄大な自然と、その中にかつて身をおいていたであろう人の営みの痕跡。もはや、何も言うことはない。
その場で20分ほど佇んだあと、静かにその場を後にする。
ローグライクゲームでイェンダーの魔除けを持って第一層へ帰還するかのように、俺はその日の内に帰還しなければならない。
後ろ髪を惹かれる思いとはまさしくこのことだ。
大きな達成感を胸に仕舞い、俺は白川郷の集落を後にした。
傾きかけた夕日が高山山系を夕暮れに包んでいく。
さらば、白川郷、そして、高山山系。
俺は今日という日をこの先ずっと忘れないだろう!
最後に今回のツーリングのまとめ。
実は本来なら朝の出をもう少し早くするつもりだったのだが、諸事情あって少し出遅れた。
そのため、書いてあるとおりに時間は終始結構押していたのだが、とりあえず記事に掲載してない範囲でもおおよそ自分の見たかったところに関しては回れたと思う。
家屋の中を見られなかったのは痛かったが、純粋に白川郷へ行くだけなら、車で高速でなんとかなるのでとりあえずはいいだろう。
大事なのはバイクで、ここまで到達して、目的を達成すること。これに尽きる。
そういえば、現地は海外の人多かったが、到着当初に誘導してくれた駐車場のおっちゃんが結構いらんことまで喋っていたなぁ。
具体的には白タク(未認可タクシー)がどーとか。
白タクとトラブって物理的に叩かれたのだの、白タクがお客さんの下ろし際にお客さんをぞんざいに扱ってただの、未認可タクシーのドライバーの殆どは日本人じゃないだの・・・3分の1くらいおっちゃんのぼやきが混ざっていた。
まぁテレビではよく聞いたりするけど、やっぱりこういう観光地ってそういうのがかなりの大問題になのだろう。
海外の人が増えるのは観光地的には美味しいんだろうけど、やっぱりそれと同時に問題も沢山出てくるんだね。
あ。あと、帰りについては記事では詳しくは割愛してるし書くつもりもないのだが、実は結構大変だった。
この時期でも夕暮れ迫ると結構寒いのよね。元のルートを戻って、琵琶湖のあるところまで戻るならなおさら。
来る際に防寒装備はそれなりにしてきたけど、その辺りも今度はもっと重装備で行かないとな。
自宅に到着したときはガチガチだったし。
でもまぁ・・・。
なんやかんやでこれで白川郷という俺の夢の一つが叶った。
次の夢を見出すために、明日に控える日常へと戻るとしよう・・・(´・ω・`)